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薬疹に関する研究

薬には作用の反面、人体にとって有害反応を有するというリスクがあり,その有害反応は主に中毒型とアレルギー型の2つに大別されます。アレルギー型は致死率が高く,致命的な重傷薬疹としてStevens-Johnson症候群(SJS)、中毒性表皮壊死症(TEN)および薬剤過敏性症候群(DIHS)があり,抗てんかん薬,アロプリノール消炎鎮痛薬,抗菌薬などで発症報告が多くみられます(図1)。これらの薬物有害反応が発症した症例で特に入院加療を要した場合、医薬品救済機構にて医療費が補償されますが,その費用は年間20億円に上ります。また、医薬品の有害反応は皮膚および皮下組織における出現頻度が最も高いため皮膚科受診される疾患です。私たちは、薬疹の迅速診断法の開発と病態解明に関する研究を行っています。

図1.本邦でのSJS/TENの発生状況(医薬品・医療機器など安全情報、2年6カ月の集計から引用)

LAMP法を用いたカルバマゼピン誘導型薬疹の迅速診断法の開発

カルバマゼピン誘導型薬疹は、日本人集団においてHLA-A*31:01の保有率が高く、カルバマゼピン誘導型薬疹の疑いのある患者がHLA-A*31:01を保有していた場合、カルバマゼピンが原因薬剤である確率が格段に高まります。このため、迅速HLAタイピングは日常臨床に極めて役立つ方法であると言えます。私たちは、HLA-A*31:01を特異的に検出するHLA-A*31:01LAMP assayを開発し、簡便かつ安価な検査法として日常臨床に役立てています。

図2.HLA-A*31:01 LAMP assay

アロプリノールによる薬疹と遺伝子多型の関連

アロプリノールを原因とする薬疹患者ではHLA-B*58:01の保有率が有意に高いことが報告されているが、HLAを決定する遺伝子領域の近傍には、炎症に関連するサイトカインをコードする遺伝子領域が存在する。TNF-αは、炎症反応の上流で主要な役割を担うサイトカインであり、その発現量はプロモーター領域に存在する一塩基多型(SNP)に依存するという報告が存在する。アロプリノールおよびカルバマゼピンによるSJS/TENおよびDIHS症例結果、アロプリノールによる重症薬疹では、HLA-B*58:01保有症例に高い確率でTNF-α-308 G/Aが連動しており、連鎖不平衡の存在があると考えられた(表)。

表 TNF-α-308(G>A)の重症薬疹罹患に対するオッズ比