教授挨拶
島根大学皮膚科学講座の歴史と教室の特徴
島根大学皮膚科学講座
教授 山 﨑 修
当講座は島根医科大学開校とともに、1979年4月に開講しました。初代教授として地土井襄璽先生が就任され、講座の基礎を築かれました。接触皮膚炎をはじめとする皮膚アレルギーにおいて卓越した研究成果をあげられ、多くの門下生をお育てになりました。1998年7月からは、第2代教授として出来尾哲先生が就任され、皮膚アレルギーに加えて皮膚感染症にも研究の分野を広げられました。2003年10月からは島根医科大学と島根大学の統合に伴い、島根大学医学部皮膚科学講座となりました。2004年12月から第3代森田栄伸教授が就任され、食物アレルギーの抗原解析、新規診断法および治療法の開発を筆頭に、アトピー性皮膚炎の病態解析、新規抗真菌物質の探索、重症薬疹の発症要因の解明とバイオマーカーの探索などに取り組まれました。小麦アレルギーの診療と研究については世界一のレベルにあります。また2016年より下肢血管治療センターを開設し、下肢静脈瘤の血管内レーザー治療などによる治療実績が年間100例を超えています。さらに産学連携やモンゴルや中国ウイグル自治区の留学生も積極的に受け入れ、多方面に功績をあげられました。
新教授紹介
私は1993年に島根大学を卒業後、岡山大学皮膚科学教室へ入局し、臨床に従事しながら、皮膚細菌感染症の研究をしました。その後、リヨン大学で細菌毒素の研究をさせていただきました。2007年から最前線の基幹病院で急性皮膚疾患や重症熱傷の治療で研鑽を積んできました。2009年から大学人として臨床・研究・教育に携わっており、一般皮膚科とともに、皮膚がんの診療に長年携わってきました。 2015年より全国初の岡山大学病院メラノーマセンターが開設され、センター長をさせていただきました。中四国の拠点として、関連部門と連携しながら集学的診療を提供し、メラノーマに関する教育と研究の向上に貢献してきました。第4代教授として皮膚がんと皮膚細菌感染症を取り入れながら、臨床・研究・教育に情熱を持続させて臨んでいく所存です。
高度で安全な皮膚科診療を提供します
皮膚がん、皮膚リンパ腫、水疱症、重症薬疹、重症皮膚感染症、熱傷などの集学的治療を行うのが基幹病院の責務です。ガイドラインによる標準的な治療や高度な手術技術の提供はできますが、相談しながら患者さんにとって最良の治療を提供できるように努めます。 教室員は少ないですが、病棟外来スタッフとチームで取り組み、関係科や多職種で連携し、高度で安全な医療を提供します。アレルギーや下肢静脈瘤の診療体制を継承し、形成外科と緊密に連携しながら山陰の皮膚がん診療の拠点を目指します。
学生や研修医には皮膚科の魅力と臨床医としての姿勢を学んでほしい
検査、手術、臨床実習の様子の動画を盛り込んだ双方向の講義を取り入れ、「診断から治療まで完遂できる」「皮膚から全身を診る」という皮膚科の魅力を伝えたい。臨床実習では、学生による病棟回診、外来予診、手術助手としてサポートなど診療参加型の更なる充実をはかり、皮膚科に特化せず、臨床医としての姿勢を学んでいただきたいです。 初期研修医には、基本的な皮膚疾患の診察法や手技の取得を主体とし、症例報告の学会発表と論文化に挑戦してほしいです。回診でも自分の意見が言える研修医であってほしい。魅力ある臨床実習や研修プログラムでやりがいと刺激を与えます。
皮膚科専攻医には古典的な皮膚科教育をします
卒後教育としては皮疹の記載をしっかりして、鑑別疾患を挙げ、検査して、診断して、治療するというルーチンを繰り返していく古典的な指導をします。近い将来導入されるであろうAIに負けない診断能力が必要です。横断的な診療連携を重視しながらも幅広い分野にわたり精通し、技量を兼ね備え、他科から信頼される皮膚科専門医を養成します。専門医取得後は興味に応じてサブスペシャリティーをもつことを薦めます。
探究的皮膚科医を養成します
研究は皮膚免疫アレルギー、皮膚悪性腫瘍、皮膚細菌感染症を軸として、基礎の教室と協力しながら、異分野の新しい研究にも挑戦していきます。 大学院生には臨床の疑問から始まる臨床と基礎を結ぶ橋渡し研究を重視し、独創性のある研究を推奨します。学位取得後には短期間でも留学し、国際的視野を持ってほしいです。
快適な皮膚科医人生を支援します
教室員には各自の将来の目標に添った、快適な皮膚科医人生を支援したいと思います。心理的安全性を担保し、自分の意見を言いやすいチームを作ります。事務作業の分散や移管、皮膚科処置の軽減や効率化などで負担を集中させない労務環境で、時間と余裕を捻出し、挑戦しようというモチベーションを維持できるように努めます。
島根県の勤務医や開業医の先生方へ
大学病院とのネットワークを強化し、ホームページの開設やWebカンファランスの導入などで効率よい研修や病診連携ができるようにして、診療技術の維持・向上を支援します。 島根県の患者さんのため、大学病院と地域医療がより緊密に連携して、次世代の良質な皮膚科医を継続的に育成できるように指揮させていただきます。